このレビューでは、定価約8万円のDenon AH-D5200と、定価約4.5万円のFiiO FT13(非常に簡単な改造を施したもの)を徹底比較します。 FT13に施した改造は「チューニングフォームMod」と呼んでいます。これはドライバー直前に音響フィルター(吸音フォーム)を置くだけの、完全に可逆的で保証にも影響しない超簡単な改造です。
チューニングフォームModのやり方(超簡単・5分で完了)
- FT13のイヤーパッドを外す
- ドライバー直前に吸音フォームを置く
- イヤーパッドを戻してフォームを固定する → 完了!
使用したフォームは、もともとSennheiser HD600シリーズ用に作られたサードパーティ製の「厚み4~5mm」のディスク型吸音フォームです。FT13のドライバーサイズに合わせてハサミで軽くカットするだけで完璧にフィットします。
使用したフォームの例(私が実際に購入したもの) ・商品名:「Thin & Thick Inside Foam Disk for HD600 series」 ・購入先:eBay / AliExpress(検索キーワード「HD600 foam disk thick」)
このModの詳細は、私のFiiO FT13単体レビューに書いてあります: → 【FiiO FT13 徹底レビュー】
FiiO FT13(改造後)とは?
FiiO FT13は大ヒットしたFT1の正統進化モデルで、60mmの大口径ダイナミックドライバーと高級パープルハート木材ハウジングを採用した密閉型ヘッドホンです。 定価は約45,000円(€329)と、FT1のほぼ2倍ですが、技術性能は明確に向上しています。
ただし、株(ノーマル)の音質は正直好みではありませんでした。 しかし、この「チューニングフォームMod」を施すことで、音のバランスが劇的に改善し、FT1を完全に超えるだけでなく、上位機種ともガチンコ勝負できるレベルにまで到達しました。
Denon AH-D5200の概要
Denonの伝統的な木製密閉ヘッドホンの系譜を引き継ぐモデル。ゼブラウッドの美しいハウジングと、50mmナノファイバー/紙振動板を採用したFreeEdgeドライバーを搭載。 発売から数年経ちますが、いまだに高い評価を受け続けている名機です。 **現行価格:約80,000~90,000円(€599)**と、FT13の約2倍の価格設定です。
主な仕様比較
| 項目 | Denon AH-D5200 | FiiO FT13(改造後) |
|---|---|---|
| 形式 | 密閉型 | 密閉型 |
| ハウジング素材 | ゼブラウッド | パープルハート木材 |
| ドライバー | 50mm FreeEdge(ナノファイバー/紙) | 60mm ダイナミック |
| インピーダンス | 24Ω | 32Ω |
| 感度 | 103dB/mW | 98dB/mW or 113dB/Vrms |
| 周波数特性 | 5Hz–40kHz | 7Hz–40kHz |
| 重量 | 385g | 356g |
| イヤーパッド素材 | 高級人工皮革 | 本革ラムスキン+スエード(2種付属) |
| ケーブル | 3m(着脱式・3.5mm) | 1.5m 高純度銀メッキOFC(3.5/4.4mm) |
| 付属品 | 6.3mmアダプター | ハードケース+2種類パッド |
装着感・ビルドクオリティ
両機とも非常に高い完成度ですが、以下の点でFT13が明確に上回っています:
- イヤーパッドが本革ラムスキン(超柔らかく通気性も良好)
- ヘッドバンドもラムスキンで長時間装着が快適
- 重量が約30g軽い(356g vs 385g)
- 付属品が豪華(ハードケース+パッド2種)
→ 装着感はFT13の圧勝です。
試聴環境
- アンプ:Questyle CMA800R(電流帰還型ヘッドホンアンプ)
- DAC:RME ADI-2 DAC FS(AKMチップ・高精度測定器級DAC)
※FT13はすべて「チューニングフォームMod」適用状態で試聴
楽曲別比較(詳細)
1. 22 Variation – Mats Eilertsen(ジャズ) D5200:極めて自然でバランスの良い音色。木材の温もりが感じられる。 FT13 Mod:中域がやや控えめになり、空間が広く感じる。楽器の分離感・空気感が明らかに上。
2. Mysig – Maridalen(北欧ジャズ) D5200:暖かく中域豊か。ボーカルが近い。 FT13 Mod:中域は控えめだが、奥行き・定位・解像度が段違い。静寂感も強い。
3. Form Before Meaning – Greg Spero(フュージョン) FT13 Mod:低域の量感・質感ともに圧倒。ダイナミクスも強く、音のレイヤーが美しい。 D5200:低域は控えめで中域重視。ステージは狭め。
4. Rambling Man – Laura Marling(アコースティック) D5200:ボーカルが前に出て感情がダイレクトに伝わる。暖かく濃密。 FT13 Mod:ボーカルは少し引くが、微細なニュアンスまで聴こえる。ステージが広く立体感が強い。
5. Sunrise – Norah Jones D5200:甘く濃厚なボーカル。 FT13 Mod:低域が豊かでステージが巨大。黒背景が美しく、情報量が明らかに多い。
6. Limit To Your Love – James Blake FT13 Mod:超低域の量感と質感が圧倒的。サブベースが体に響く。 D5200:暖かいボーカルが美味しいが、低域は薄め。
7. Bullet in Your Head – Rage Against the Machine D5200:上中域が強くアグレッシブ。エネルギッシュ。 FT13 Mod:やや落ち着いた印象だが、低域の迫力と解像度で勝負。
8. Midnight City – M83 FT13 Mod:レイヤリングの美しさ、奥行き感が別次元。 D5200:前面に出てくる音で勢いはあるが、精緻さでは負ける。
9. Summer 3(Vivaldi Recomposed)– Max Richter D5200:生き生きとしたエネルギー、素晴らしい木材の響き。 FT13 Mod:より洗練され、静寂の中から音が浮かび上がるような表現力。
音の傾向まとめ
| 項目 | Denon AH-D5200 | FiiO FT13(フォームMod後) |
|---|---|---|
| 全体のバランス | 暖かめ・中域寄りニュートラル | やや低域寄り・落ち着いたバランス |
| トレブル | 自然で滑らか | 同等程度の量感だが解像度が明らかに上 |
| ミッドレンジ | 前に出て暖かく濃厚 | やや控えめだが精緻でニュアンス豊富 |
| ベース | 適度な量・暖かい | 量・深さ・締まり・質感すべて上 |
| サウンドステージ | 中程度 | 明らかに広く奥行きがある |
| イメージング | 良い | 圧倒的に優れる |
| 解像度・精緻さ | 非常に高い | さらに一段上 |
| ダイナミクス | 優秀 | 同等かやや上 |
| ティンバー(音色) | 極めて自然・暖かい | ややクール寄りだが非常に自然 |
最終結論
ノーマル状態(改造なし)のFT13なら、間違いなくDenon D5200のほうが好ましいチューニングです。
しかし、わずか数百円の吸音フォームを入れるだけで、FiiO FT13は劇的に変わります。
改造後のFT13は以下の点でD5200を明確に上回ります:
- 解像度・精緻さ
- 低域の質・量・深さ
- サウンドステージ・イメージング・レイヤリング
- 黒背景・静寂感
- 装着感・付属品
価格差が約2倍(8万円 vs 4.5万円)であることを考えると、FiiO FT13(フォームMod)のコスパは圧倒的です。
正直、ここまで差がつくとは思っていませんでした。 FiiOさん、最初からこのチューニングで出してほしかった…! でも、逆に言えば「自分でチューニングできる楽しさ」を残してくれたとも言えますね。
結論: チューニングフォームModを施したFiiO FT13は、Denon AH-D5200をほぼ全ての面で超える怪物ヘッドホンに変身します。 約半額でこの性能が出せるなら、もうD5200を買う理由は「暖かくて濃厚な中域が好き」「Denonのブランドが欲しい」以外ほとんどありません。
ヘッドホン好きなら、ぜひ一度このModを試してみてください。 数百円と5分の作業で、世界が変わります。





