LGは長年にわたりワイヤレススピーカーの分野で製品を展開し続けてきましたが、JBLやSonyといった競合ブランドほどの市場での成功を収めていないかもしれません。しかし、その挑戦を止めることなく、LGは新たなモデルを次々とリリースしています。その中でも、LG XBOOM Go XG8Tは、名前が少し覚えにくいものの、現在のXBOOMシリーズにおいてパーティーシーンを盛り上げるポータブルスピーカーとして際立っています。

このスピーカーは、軍用グレードの堅牢なデザイン、IP67等級の防水防塵性能、120Wの強力なオーディオ出力、そしてパーティーを彩る鮮やかなLEDサイドライトを備えています。これらの特徴は、アウトドアでの使用や大規模な集まりに最適なスピーカーであることを示唆しています。しかし、スペックシート上の魅力が実際の使用感でどのように発揮されるのか、気になるところです。
この詳細なレビューでは、LG XBOOM Go XG8Tのデザイン、機能、音質、バッテリー寿命を徹底的に検証し、果たしてこのスピーカーがパーティーの主役になれるのかを評価します。アウトドアでの使用を想定した堅牢性や、音楽を最大限に楽しむための機能性、そしてその音質が価格に見合っているかどうかを明らかにします。
デザイン:タフで実用的
- 軍用グレードの耐久性
- IP67防水防塵性能
- 重量3kg、持ち運びに工夫が必要
LG XBOOM Go XG8Tは、ポータブルスピーカーとしては大型で存在感があります。重量は3kgもあり、気軽に持ち運べる軽量モデルとは一線を画します。たとえば、音楽フェスティバルやキャンプ場でパーティーの雰囲気を乱す者が現れたとしても、このスピーカーの重厚なボディならその場をしっかり掌握できるほどの迫力があります。
外観と構造
全体はシックなブラックで統一されており、プロフェッショナルで真剣な印象を与えます。サイドに配置されたLEDライトが、モノトーンのデザインに彩りを加えます。底面には小さな台座が付いており、凹凸のある地面や不安定な場所でも安定して設置可能です。これにより、ビーチやキャンプ場など、さまざまなアウトドア環境での使用が想定されています。
上面には、直感的に操作できるボタンが配置されています。具体的には、電源、Bluetooth接続、音量調整、再生/一時停止、Sound Boostモードのボタンが並び、シンプルで使いやすい設計です。持ち運びを考慮し、LGはハイブリッドストラップを付属。これにより、肩にかけたり、手で持ったりと、2通りの方法でスピーカーを持ち運べます。この柔軟性は、アウトドアでの移動時に特に便利です。
耐久性
LG XBOOM Go XG8Tの最大の特徴の一つは、IP67等級の防水防塵性能です。これは、3メートルの水深に30分間浸かっても問題なく動作し、砂やほこりなどの細かい粒子から内部を保護できることを意味します。さらに、軍用グレードの耐久性を備えており、衝撃、高温、振動、さらには「塩霧」(海辺での塩分による腐食)にも耐える設計です。このため、ビーチや山間部、悪天候下でも安心して使用できます。
背面には、充電用の電源ケーブルと他のデバイスを充電するためのUSB出力ポートを保護するフラップが設けられています。また、サービス用のUSB-Cポートも搭載されています。素材は主にプラスチックですが、頑丈で耐久性が高く、過酷な環境でも信頼できる作りです。
機能:パーティーに必要な実用性
- Bluetooth 5.1マルチポイント接続
- LG XBOOMアプリ対応
- Sound BoostモードとMulti Playモード
LG XBOOM Go XG8Tは、Wi-Fiには対応せず、Bluetooth 5.1を採用したワイヤレススピーカーです。Bluetoothマルチポイント接続により、2台のデバイス(たとえば、2台のスマートフォン)に同時に接続可能です。これにより、友人同士で交互に音楽を再生するようなパーティーシーンで便利です。さらに、LG独自のMulti Playモードでは、最大5台のXBOOMスピーカーを連携させ、迫力のあるサウンドシステムを構築できます。
Bluetooth性能
対応コーデックはSBCとAACで、AndroidおよびiOSデバイスの標準的なストリーミングに対応しています。Bluetoothの接続テストでは、フルボリュームで音楽を再生しながら庭の端まで歩いても、接続はほぼ途切れず安定していました。距離が離れるとわずかに途切れることがありましたが、全体的に信頼性の高い接続性能です。
出力とスピーカー構成
LG XBOOM Go XG8Tは、最大120Wの出力(LGのウェブサイトでは60Wとも記載)を持ち、2ウェイスピーカーシステム(低音用のウーファーと高音用のツイーター)で構成されています。ただし、モノラル(1チャンネル)仕様である点は意外です。Sound Boostモードは、音量と低音を強化し、屋外での使用時に特に効果を発揮します。屋外では壁や天井の反射音がないため、音量が不足しがちですが、このモードはそうした環境での音の広がりを補います。
LG XBOOMアプリ
専用アプリ「LG XBOOM」を使用すると、以下の機能が利用可能です:
- バッテリー残量の確認
- 音量およびイコライザーの調整(スタンダード、Sound Boost)
- サイドライトのカスタマイズ(パーティーの雰囲気に合わせて色を変更)
- 電源設定の管理
アプリの操作はシンプルで直感的ですが、機能は必要最低限に留まります。特にサイドライトは、明るい日中では効果が薄く、夜間や室内での使用でより映えます。通話受信にも対応していますが、パーティー用途を考えると、この機能を使う機会は限られるかもしれません。
バッテリー寿命:実用性は十分か?
- 公称15時間(50%音量、サイドライトオフ)
- フル充電まで3時間
- 高速充電非対応
LG XBOOM Go XG8Tのバッテリー寿命には賛否両論があります。LGは、50%音量かつサイドライトオフで最大15時間の再生時間を公称していますが、実際の使用では異なる結果となりました。
バッテリーテスト
Spotifyを50%音量で1時間ストリーミングしたテストでは、以下の結果となりました:
- Sound Boostモードオフ:99%から91%に低下(約8%消費)
- Sound Boostモードオン:91%から81%に低下(約10%消費)
これにより、最も電力消費の多いモード(Sound Boostオン、サイドライト使用)では、約10時間の再生が可能と推定されます。公称の15時間には届きませんが、パーティー用途としては十分な持続時間です。ただし、初期使用時にバッテリーが急速に減少する(10分未満で15%低下)という報告もあり、使い始めの消費が気になる場合があります。
充電には付属のACアダプターと電源プラグを使用し、フル充電には3時間かかります。高速充電には対応しておらず、屋外でバッテリーが切れた場合の即時充電は難しい点に注意が必要です。
音質:パーティー向けだが課題も
- ボーカルの表現力に優れる
- 高音域の精度がやや緩い
- 低音のバランスに課題
音質はスピーカーの核心であり、LG XBOOM Go XG8Tはパーティー向けのスピーカーとして十分な性能を発揮しますが、価格に見合った精緻さには欠ける部分があります。
高音域
Greg Foatの「Symphonie Pacifique」を再生した際、高音域のレスポンスはシャープさに欠け、詳細さが不足していると感じました。刺さるような明るさや粗さはありませんが、高音がやや緩く、細かいニュアンスが捉えきれません。楽曲によっては高音の表現が良好な場合もありますが、全体的に精度が不足しています。このスピーカーは、音響的な正確さを追求するモデルではなく、パーティーでの盛り上がりを優先しているため、この点は割り切る必要があります。
中音域
中音域も同様に、詳細さや分離感が不足しています。ボーカルや楽器が一つの塊に感じられることがあり、特にモノラル仕様であることが影響している可能性があります。Sound Boostモードをオフにすると、音のバランスが改善し、Sufjan Stevensの「Chicago」では中音域の暖かみと滑らかさが引き立ち、ボーカルの表現が向上します。
ボーカル
ボーカルの表現力は、このスピーカーの強みの一つです。Mayeの「La Cancion」やJacob Collierの「The Sky Above」では、暖かく滑らかな音色により、ボーカルが非常に魅力的で生き生きと聞こえます。Norah Jonesの「I Don’t Know Why」では、ボーカルの抑揚をしっかりと捉えますが、ダイナミックレンジは狭く、静かな部分から大きな音への変化は控えめです。
低音
低音は、スタンダードモードでの「La Cancion」ではやや平坦で硬い印象です。Sound Boostモードをオンにすると、低音に深みと力強さが加わり、Mayeのボーカルにも影響を与えずに強化されます。ただし、他の楽曲では低音が過度に強調され、バランスが崩れる場合があります。音量を上げると低音がさらに前面に出るため、低音重視のサウンドを好むユーザーには魅力的ですが、バランスを重視する場合は調整が必要です。
LG XBOOM Go XG8Tの価格と購入先
- Richer Sounds: £99.00
- Amazon UK: £109.00
定価£399 / $399は、音質や全体的なパフォーマンスを考慮すると高額に感じられます。ただし、割引価格(£99〜£109)であれば、低音重視のサウンドを求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となります。
購入すべきか?
購入をおすすめする場合
- 割引価格での購入
大音量で低音の効いたサウンドを求めるなら、割引価格での購入はコストパフォーマンスが高いです。アウトドアでのパーティーやキャンプで活躍する堅牢なデザインも魅力です。
購入を控えるべき場合
- より高音質を求める場合
Bose SoundLink Max、JBL Xtreme 4、またはMarshallのスピーカーは、音質の精緻さやバランスで優れています。特にJBL Xtreme 4は価格が低く、洗練された音を提供するため、競合として強い存在です。
最終評価
LG XBOOM Go XG8Tは、パーティー向けの堅牢なBluetoothスピーカーとして、一定の楽しさを提供します。軍用グレードの耐久性、IP67防水防塵性能、120Wの出力、LEDサイドライトは、アウトドアでの使用や大規模な集まりに最適です。しかし、音質面では、詳細さやクリアさに欠け、高音域や中音域の緩さ、モノラル仕様による分離感の不足が目立ちます。
定価£399 / $399は、競合モデル(特にJBL Xtreme 4)と比較すると割高で、プレミアムエコノミークラスの価格でエコノミークラスの音質を提供している印象です。割引価格なら、パーティーを盛り上げるスピーカーとして十分な価値がありますが、最高のBluetoothスピーカーを求めるなら他モデルを検討する価値があります。





