免責事項 本レビューで使用したHIFIMAN HE400seは、公正な意見を書くことを条件にHIFIMANよりサンプル提供を受けたものです。レビュー機会をいただいたHIFIMANチームに感謝いたします。
HIFIMANはハイエンドヘッドホン市場のトップランナーの一つであり、常に音質の限界に挑戦し続けています。これまで同社の製品は非常に高価で、一般的な予算では手が届きにくい存在でした。しかし今回、HIFIMANはこれまで蓄積してきた技術とノウハウを惜しみなく投入し、誰でも手が届く価格帯で本格的な平面駆動(planar magnetic)ヘッドホンをリリースしました。それがHE400seです。
技術ハイライト
ドライバー
HE400seは大型の平面駆動ドライバーを搭載したフルサイズのオープン型ヘッドホンでありながら、非常に軽量に仕上げられています。 実測でダイアフラム径は約80mm(シルバートレース採用)。両耳それぞれに3.5mm TRS端子を採用しており、ティップが+極となっています。
このヘッドホンは多くのソースで十分に駆動可能ですが、「十分なパワーがあること」が前提です。 高出力のポータブルプレーヤー(DAP)なら直挿しでもOKですが、スマートフォン直挿しは非推奨です。
主なスペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 形式 | オープン型平面駆動 |
| 周波数特性 | 20Hz – 20kHz |
| インピーダンス | 25Ω |
| 感度 | 91dB/mW |
| 重量 | 約370g |
| 接続 | 両出し 3.5mm TRS |
感度91dBという数値は、平面駆動ヘッドホンとしてはやや低めで、ここが駆動の難易度を決めるポイントです。
わずか数年前まで、このクオリティのフルサイズ平面駆動ヘッドホンをこの価格帯で手に入れることはほぼ不可能でした。平面駆動ヘッドホンの製造コストの大部分は、精密なマグネットアセンブリとドライバー製造工程に費やされるためです。
Stealth Magnet Design(ステルスマグネット設計)
近年、ユーザーの間で「マグネットにモッドを施して音の回折を減らす」改造が流行っていました(代表例:AudezeのFazor技術)。 HIFIMANも独自のアプローチで同様の問題に取り組み、**Stealth Magnet(ステルスマグネット)**を開発・採用しました。
この技術はマグネットの形状を特殊にすることで、ダイアフラムから出た音波がマグネットにぶつかって乱反射・回折するのを極限まで抑えます。 結果として「マグネットが音的にほぼ透明になる」状態を実現し、位相の乱れや音の濁りを大幅に低減しています。 HE400seにもこの最新ステルスマグネットが搭載されており、上位機種と同等のクリアさが得られています。
第4世代ヘッドバンド
HIFIMANのヘッドバンドはこれまで何度か進化してきました。
| 世代 | 代表モデル | 特徴・評価 |
|---|---|---|
| 第1世代 | 初期HEシリーズ | 低姿勢で快適だったが現在は廃止 |
| 第2世代 | HE400i / HE1000など | 吊り下げ式ストラップ、快適だがヨークに耐久性問題 |
| 第3世代 | Sundara / Ananda | 現行主流 |
| 第4世代 | Deva, HE-R10, HE400se等 | 最新標準デザイン、剛性向上 |
HE400seに採用されているのは最新の第4世代ヘッドバンドです。見た目は厚めで最初は硬く感じますが、アーチ形状により重量が均等に分散され、適度なクランプ力で長時間でも疲れにくい設計になっています。使っていくうちにトップクッションも柔らかくなる傾向があります。
快適性&遮音性
- 遮音性:オープン型のためほぼゼロ。外音はほぼそのまま聞こえます(オープン型としては標準的)。
- 快適性:370gという軽さと適度なクランプ力、柔らかいベロア調イヤーパッドにより非常に良好。かつての「重い平面駆動」のイメージは完全に払拭されています。
付属ケーブルについて
デザインは気に入っていますが、付属ケーブルには正直不満があります。
| 問題点 | 詳細 |
|---|---|
| 3.5mmプラグ | ストレート型でL字や凹みジャックに対応できない(スマホケースを外さないと刺さらない) |
| ケーブルの硬さ | メモリーワイヤーのように硬く、曲がった形を覚える。ポータブル用途には不向き |
| 素材 | 銀線で導電性は良好だが、硬さがすべてを台無しにしている |
結論:ほぼ確実にサードパーティ製ケーブルに交換したくなります。
パッケージ・付属品
最近のHIFIMANらしいシンプルでエコな新パッケージを採用。過剰包装ではなく、コストを抑えた印象です。
付属品一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ヘッドホン本体 | 1台 |
| ケーブル | 1.5m 3.5mm両出し |
| 6.35mm変換アダプター | 1個 |
| 交換用イヤーパッド | 1組(本体に装着済みのものと同一) |
| 取扱説明書・保証書 | あり |
ケースは付属しません。
FAQ(よくある質問)
Q1. スマホ直挿しで使えますか? A. 音量は出ますが、ダイナミクスが死にます。ポータブルアンプや高出力DAPを強く推奨します。
Q2. 感度91dBって駆動難しいですか? A. 25Ωと低インピーダンスなので電流は食いますが、電圧はそれほど必要ありません。Topping L30やiFi ZEN CANなど中級クラスのアンプで十分に鳴ります。
Q3. Sundaraとどっちがおすすめ? A. 予算に余裕があればSundaraの方が全体的な完成度が高いです。HE400seは「この価格でここまでやるか!」という驚きが魅力です。
Q4. ケーブル交換したらどれくらい音が変わりますか? A. 付属ケーブルが硬くマイクロフォニックノイズも乗りやすいので、柔らかい良質ケーブルに変えるだけで解像度・定位が明らかに向上します。
Q5. 長時間つけても疲れませんか? A. 370g+適度なクランプで非常に快適です。2~3時間連続使用でも痛みはほぼありません。
総評
HIFIMAN HE400seは「平面駆動ヘッドホンの民主化」と呼ぶにふさわしい製品です。 ステルスマグネット、大型平面ドライバー、軽量快適設計をこの価格で実現したことは素直に賞賛に値します。
もちろん上位機種(Sundara / Ananda / Aryaなど)に比べれば解像度や音場のスケールでは敵いませんが、この価格帯では圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。
平面駆動ヘッドホンに初めて挑戦したい人、コスパ最強のオープン型を探している人には自信を持っておすすめできる一本です。





